透明ディスプレイ
2024年6月12~14日の期間に幕張メッセでInterop24と同時開催(Interop Tokyo/DSJ/APPS Japan/Vision AI Expo)されたDSJ24(デジタルサイネージジャパン)に参加した。4展同時開催で、展示内容がAI,IT,情報システム関連の割に大規模展示会ではあるが小規模事業者やアカデミアの小コマの展示者も多く全体はコンパクト化した印象であった。また、Hall2~6に大小出展社を多く詰め込んだため、来場者数に対して通路が狭く感じ、動線が一部コンフリクトしていた。Covid-19対策の時のブースや小間設置からの差が大きい。主催者のコスト削減の事情からとは思うが、In-Personのリアル展示会ではコロナ時とは意味合いが異なるが、もう少し適切な”Social distance”を配慮し長時間滞在を可能したレイアウトの方が(今後検証は必要だが、)参加者視点での展示効果や出展社の商談時の集客効果は高くなるのではと推測する。
DSJ24は、大型LED・OLEDディスプレイが展示の主アイテムだが、残念ながら日本企業は、大型のディスプレイやフラットパネルをほとんど製造していない。そのため国内企業の大規模ブースはほぼない。そのため本分野については主に海外(中国、韓国)企業の出展物から動向を探ることになる。国内展示会も現在の円安が続く状況において海外企業にとっては出展費用削減効果は高いので、中~大規模出展のベネフィットを海外にアピールできるかどうかが国内展示会主催団体や企業にとって今後生き残りのキーとなるだろう。大規模展示会は、予算の限られる国内事業者にとってもワンストップソリューションとして価値はまだ大きいと考える。そのためには、国内市場は大きいとは言えないので、従来の見本市としての役割やセミナー併設による啓蒙活動、展示会内での小規模ツアーといった内向きの手法以外に現地および対面で開催する意味を海外視点でも今一度考えリニューアルすることが必要であろう。
コロナ前の状態に展示会や講演会規模はほぼ戻っており、これからはリカバリーよりも将来に向けた取り組みが必要と考える。本サイトのテーマの一つであるがAI・ロボティクス技術を展示会として活用していくなど将来のリアル展示会のあり方を再定義する時期に来ているのではと考える。
さて、本項で取り上げるのは、デジタルサイネージジャパン(DSJ24)でLGディスプレイ(LGD)が動態展示していた透明OLEDのTiled Displayである。透明ディスプレイの商用展開は、ラスベガスで毎年開催されるCES(Consumer Electronics Show)で、最新情報を把握できるが、Covid-19の影響もあり、我々のような小規模事業者にとっては予算が限られるため、展示会などに海外出張することは困難である。YouTubeで参加レポートを視聴してもレポーターと視点が異なる場合が多く参考にならないことも多い。今回、最新技術というわけではないが、透明OLEDを実際に見ることができたのは収穫であった。
上の写真は会場に展示してあったTiled 透明OLED Wallである。以前から透明ディスプレイは、透過率が70%以上であれば窓材代替設置が可能なレベルになると言われており、本パネルの透過率は不明だが背景との比較から高い透過率であると推測できる。また本器は写真からわかるようにパネルのつなぎ目に不透明な枠がある。そのため、CESで発表されているようなシームレスのパネルと比較すれば低コストで設置が可能と思われる。
現在、透明ディスプレイの技術はLGD社(OLED)およびSamsung社(Micro-LED)が世界的にみても2大拠点として開発に力をいれており開発も先行している。15年以上前のSIDやCES等で一部展示されていた液晶を用いた透明ディスプレイでは、冷蔵庫用の透明なドアや食器棚のような家具の窓材として試作品展示をしていた。これらはフルカラー液晶の透過率が非常に低いためにバックライトの代わりになる照明を背部に設置しても問題ない用途に限られていた。一方、現在のOLEDやMicro-LEDを用いた透明ディスプレイは自発光で高輝度化が進み、狭ベゼル化も進んでいるため、透明ディスプレイに適した応用製品があれば技術的にはテスト展開可能な表示品質レベルに到達している。Micro-LEDのコストの問題やOLEDの場合、輝度と寿命とのトレードオフはあるもののディスプレイの可能性を大きく拡げる技術として今後注目されると考えている。
TV市場は、高画質化と低価格化が非常に顕著な液晶技術をOLEDやMicoro-LEDで代替することは難しい。これらの新しい応用技術はスポーツアリーナや室内の大型サイネージから展開されることが予想される。ここでは述べないが将来技術として特にXR技術との融合が期待されるので今後も技術動向に注視したい。(LambdaWKS)