生体信号とXR技術

Tokyo Big Sight

コンテンツ展、XR総合展が2024年7月3日から5日に東京ビッグサイトで開催された。その内の一つの展示会として第2回メタバース総合展があり、その中で生体信号(ユーザーのメンタル状態)をフィードバックした情報からAIを用いた自動作曲をおこない、次々に楽曲を変えながらAIに学習させることで、ユーザーのリラクゼーションなどソリューションを提供するシステムの説明があった。brAInMelody(ブレインメロディー)というのが本技術の名称ということであった。

本技術を開発しているクリムゾンテクノロジー株式会社の飛河和生氏(Kaz Hikawa, 代表取締役)によると、この技術は科学技術振興機構(JST)のプロジェクトの一つとして大阪大学(沼尾正行教授)、東京都市大学(大谷紀子教授)、ベルギーIMECと共同研究をおこない。昨年までの10年にわたる開発成果が技術基盤になっているということであった。また、大阪万博(EXPO2025)でのライブデモも予定している。

プレインメロディーは、これまでの技術提携やライセンス契約に加え新たな製品化を本格化させたいということであったので、何かボトルネックになっていることはないかと飛河氏にお聞きしたところ、手軽に使用できるヘッドバンド・ギアが無いことが一つ問題であるらしい。これまでは、IMECの頭部の同時8か所脳波計測(EEG)可能なデバイスを用いていたが、研究用機器のため今後本技術の普及のためには8か所の脳波計測を手軽に行える機器の開発が必要になるということであった。簡易方式ではリストバンドやApple Watchなどによる脈波(PPG)計測でも良いが、理想的には脳波(EEG)や心電図(ECG)の併用が必要らしい。

筆者(LambdaWKS)は、MUSE2を用いた(4点計測+脈波)で脳波取得を行う実験もおこなっているが、4点計測では8点計測と比較して信号の質が落ちるというのが飛河氏の会場での見解であった。本技術を更に進化させるため多点EEG計測用ヘッドバンド・ギアのローコスト化の解を求めているということである。以上が本件の簡易報告である。

crimson technology booth

EEGなど生体信号やeye-trackingのセンサーをVRゴーグルに取り付け(または最初から搭載された装置を用い)たヘッドセットを用いたアカデミックな研究も各種おこなわれている(例:参考文献参照)。EEGのヘッドバンドやVR端末に共通する問題は、ユーザーにヘッドセットを装着してもらうということに対するしきい値が高いことと、長時間の装着がユーザーに負担を強いる場合が多いことである。こういった点は、装着型のデバイスを開発する上で常時付きまとう課題だが、フォームファクターやセンシング方式に何等かブレークスルーがあれば生体情報取得しユーザーにフィードバックするポータブルなシステムとして装着型のXR端末の可能性が大きく広がり、新規市場開拓も可能と考えられるので今後に期待したい。(LambdaWKS)

参考文献:例えばJ. Qin and F. Kazazi: “Sustained Attention Outcomes of ADHD Traits and Typically Developing Participants”, International Journal of Health Sciences and Research, Vol14; Issue: ;Jan. 2024.

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